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レポート

2011.06.22
自由設計入門(2006年12月)

理想の住まい造りへの必要不可欠な要素として、いわゆる自由設計を希望される方は多いと思います。敷地の可能性を最大限追求し、使いやすい間取り、美しい外観・インテリア、最新の設備等、夢はふくらむばかりです。それを受けて、各業者も”何でも出来ます”的な自由設計・フリープラン・オーダーメイド等々のキャッチフレーズで、設計の自由度が高いことを訴えます。

しかし、いざ設計を始めてみると、敷地の条件、法的な規制、構造的制約、予算的な限界など、遠からず理想の住まい造りとは、さまざまな制約への挑戦であると知る事になります。道半ばにして、「いっそ建売かマンションにしていれば」とため息をつかれる方も多いのではと想像します。

私共は本物志向の輸入住宅の自由設計を数多く手がけてまいりました。輸入住宅を志向されるお客様は、お住まいへのこだわりが強く、雑誌やインターネットで集めた情報をすばらしく、几帳面にファイリングが何冊にもわたる奥様もいらっしゃり、お住まいにかける熱意には脱帽するばかりです。もちろん、私共も出来る限りお客様の要望を取り入れる設計を行いますが、あふれんばかりのご要望すべてを実現することは難しく、現実的な制約との調整も必要になりますが、要望の優先順位をお客様にご判断いただくことが重要です。設計という作業は、ある意味、お客様のご要望の取捨選択そのものとも言え、当然お客様の果たされる役割がとても大きいのです。ときとして、深刻に悩まれることもあるとは思いますが、入居後実感される、我が家の美しさ、快適さ、丈夫さには格別な充実感があるようです。生涯に何度とあることではないでしょうから、業者まかせにして後悔するよりも、ひとつひとつ吟味してすべてに納得してすすむ住まい造りこそ、あるべき姿ではないでしょうか。

一口に自由設計と言っても、業者によって千差万別で、例えば、プランは用意された間取りやデザインをアレンジする程度、仕様はあらかじめ選別された標準品の中から選択する方式で自由設計といっている業者もあるでしょうし、逆に白紙に近い状態から設計し、仕様においてもメーカー等の制約なしに幅広く選べるやり方もあると思います。極端な例を単純に比較すれば後者の方が良いと思われる方が多いと思いますが、実は品質管理やコストコントロールという面では前者が有利です。さらにいえば、敷地の条件に合い、間取り、デザイン、仕様もすばらしく、それが手に届く価格であれば、多くの人が自由設計でなくてもと決断されることでしょう。しかし、売る側もさしたるもので、基本プランや基本仕様においては若干物足りない程度の内容に抑え、詳細打合せで、設計変更、仕様変更を積み重ね最終的にはそれなりの差額になり、結局、後者の方法で造った家と大して変わらない価格になることもあるようです。まして住まいの本当の品質は10年20年と住んでみないとわからないわけですから、その時点の判断の是非は非常に難しいことです。少なくとも本当に納得できて、信頼できるまで契約しないことです。月末とか決算とかを口実にした値引き、サービス等あまい言葉には乗らないことをお勧めします。

また、「何でもやりますよ」にも注意をしてください。例えば、施主の要望通りにした結果、構造的に問題のある設計になってしまったとします。構造的問題に目をつむり、そのまま施工してしまうことは許されないことですし、施主がインターネットで見つけた割安な建材が実は粗悪なもので、後日問題になったときに「施主の指定したものだから」と責任を転嫁することも好ましいことではありません。業者側は問題点を早目に提示する姿勢が必要ですし、施主も業者側の「NO」の理由を、業者の都合によるものなのか、結果的によい家を造ろうとする姿勢によるものなのかを洞察することが大切です。

ここまで書くと、理想の住まい造りへの道は五里霧中になってしまうようですが、実は問題点の多くは結局のところ住まい造りのパートナー(業者)選びに集約されるようです。やはり業者によって得意不得意があります。モデルハウスは見せることを前提にしたものですから、割り引いて評価する必要がありますが、とにかく実績例をいくつか見て、共通項的な特徴を探すのです。特徴の見えない会社はやはり特徴のない家を造ります。特徴が感じられれば、それがご自身の期待することと一致しているかどうかを判断してください。一致しているところが多ければ多いほど住まい造りはスムースに運びます。さらに、その業者が誠実で良心的であるかを判断してください。たとえ良い家を割安な価格で造れそうでも、最終的な満足、不満足は、業者がどれだけ施主の目線で家を造れるかによります。担当者だけでなく、上司や経営者と話をしてその業者がどのような姿勢で各物件に取り組んでいるかを評価し、最終的なパートナーを選定すべきだとご提言申し上げます。

一件々々を振り返りますと、お客様もビルダーである私どもも本当に気の遠くなるような労力をかけてやっと家が完成するわけですが、終わってみると、一人ひとりのお客様から学ぶべきことが多く、その積み重ねこそが弊社のノウハウなっているのです。こだわりのあるお客様に声を掛けていただき、また、すばらしい洋館を造れる機会をいただけますことを、心より願っております。

(K・W記)

カテゴリー:話題

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