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レポート

2011.06.23
名を残すより望むこと(2007年1月)

昨年、短期でしたが研修旅行でアメリカ北西部のシアトル・ポートランド周辺の住宅視察に行って参りました。

主な目的は両市で開催されている高級住宅の展示販売会であるストリート オブ ドリーム(Street of Dreams)の見学でしたが、他にも周辺の開発中の新興住宅地や古くからの高級住宅街を視察することができ、輸入住宅業界に身を置く者として学ぶべきことの多い旅行でした。

シアトル、ポートランドの両市でのストリート オブ ドリーム(Street of Dreams)では延床面積200坪以上、販売価格も数億円という超豪邸が6棟ずつ紹介されておりましたが、建物の規模、デザイン性の高さ、吹抜等大胆な空間演出、そして何より圧巻は、ホームシアターやホームバー、果ては温水プールまで、贅を尽くすとはこういうことかと実感して参りました。

アメリカ住宅の標準的な間取りではフォーマルなリビング・ダイニングと家族がカジュアルに過ごせるファミリールームやヌックを分離することが多のですが、さらに規模が大きくハイグレードな家では、家族だけでなくホームパーティーなどで招いたお客様をもてなすためのエンターテイメント的な要素が加わるようです。

また、市内では50~100年を超える現役の住宅が建ち並ぶ街並みも見てきましたが、2×4工法の耐久性の高さと古い洋館の深い趣きを再認識して参りました。

当社の建築思想の根幹として「設計・施工・建材のすべてがアメリカのままだから、丈夫で、住み心地が良く、美しい洋館ができる。」という考えがあります。言うは易しですが、実際には日本人が日本で生活するための住宅をつくる訳ですから、日本的な生活習慣をすべて排除できるはずもなく、日本的な要素をいかに違和感なく洋館に取り込むかという課題が生じます。

例えば、玄関のタタキや下駄箱を設けた上で、洋館のエントランスホールとしての雰囲気の確保や、建物の顔とも言える玄関が南側に来る場合に、布団干場としてのバルコニーが外観をぶち壊してしまわないか等は、デザインの苦心するところです。

大切なのは本来のオリジナルのイメージをしっかりと持ちつつ、違和感がでないようにアレンジすることです。

冒頭でアメリカに住宅の視察に行き、学ぶべきことが多かったと述べましたが、強く心に残っているのは、外構を含めた外観の美しさであり、演出や装飾にあふれ、質感にこだわったインテリア(空間)の魅惑的な雰囲気などです。思えば、日常の物件についての思考的作業も、いかに美しい住宅をつくるかという方向性のものが多く占めていると感じます。それは芸術家が作品を創ること、作家が文章を推こうすることに限りなく近い作業のように思えます。もちろん、住宅にとって美しさだけが重要なわけでもありません。それでも、アメリカの古くも存在している住宅は皆、美しかったのです。名を残そうとは思いません。ただ、100年後、私どもが造った住宅のひとつひとつが現役の住宅として存在することを願っております。

新しい一年が始まります。本年も宜しくお願い致します。

(K・W記)

カテゴリー:話題

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